2011年1月14日金曜日

新国立劇場にて演劇「わが町」を観る


平成23年1月15日(金)
18:30開演
21:40終演
 
新国立劇場
中劇場
 
 
 
JAPAN MEETS…-現代劇の系譜をひもとくーⅢ
わが町
 
Our Town
 
作 :ソーントン・ワイルダー(Written by Thornton Wilder)
翻訳:水谷八也(Translated by Mizutani Hachiya)
演出:宮田慶子(Directed by Miyata Keiko)
キャスト 
舞台監督:小堺一機(Stage Manager:Kosakai Kazuki)
ドクター・ギブズ:相島一之(Dr.Gibbs:Aijima Kazuyuki)
ジョー・クローウェル:橋本淳
ハウイー・ニューサム:中村元紀(Howie Newsome:Nakamura Genki)
ギブズ夫人:斉藤由貴(Mrs.Gibbs:Saito Yuki)
ウェブ夫人:鷲尾真知子(Mrs.Webb:Washio Machiko)
ジョージ・ギブズ:中村倫也(Gerge Gibbs:Nakamura Tomoya)
レベッカ・ギブズ:大村沙亜子
ウォリー・ウェブ:菅野隼人
エミリー・ウェブ:佃井皆見(Emily Webb:Tukui Minami)
ウィラード教授:北澤雅章
ウェブ氏:佐藤正宏(Mr.Webb:Sato Masahiro)
サイモン・スティムソン:山本亨(Simon Stimson:Yamamoto Akira)
ソウムズ夫人:増子倭文江(Mrs.Soames:Masuko Shizue)
ウォレン巡査:青木和宣(Constable Watten:Aoki Kazunori)
サイ・クローウェル:横山央
サム・クレイク:内藤大希
ジョー・ストッダード:中野富吉
町のひとびと:朝倉みかん
         宇高海渡
         内山ちひろ
         斉藤悠
         佐々木友理
         下村マヒロ
         高橋智也
         高橋宙無
         橋本咲キアーラ
         水野駿太朗
         神尾冨美子
         武居正武
         都村敏子
         徳納敬子
         森下竜一
         吉久智恵子
ピアノ演奏:稲本響(Pianist:Inamoto Hibiki)
 
朝日新聞の劇評(山本健一・演劇評論家)
「若い男女の純粋さ光る
 ピアノ仕掛けの脱色されたアンサンブル劇。
 唐突だが、T.ワイルダー作「わが町」の宮田慶子演出による公演(翻訳・水谷八也)を見て、そんな言葉が浮かんだ。
 反リアルを目指した作者の意図に沿い、固有の場所や時間を無化し、宇宙から人の営みを眺める視点を強調した演出、これが脱色。巨大な舞台奥の壁に青空を浮かべ、無数の星をまたたかせ、スケール感を出した。しかし、この作品はとりわけ観客の想像力に訴えなければいけないのに、舞台が遠すぎる。観客と舞台とが分断されてしまう。
 米国の田舎町に住む医師(相島一之)一家と、新聞編集長(佐藤正宏)一家の家庭劇だ。装置、衣裳、照明とも単純化されている。時の流れもリアルではない。1901年5月の一日、3年後の、医師の息子(中村倫也)と編集長の娘(佃井皆美)との結婚式の日、母となった娘の早すぎた死の葬儀と進むが、舞台監督(小堺一機)が随時出てきて、時間を自由に手繰る。小堺は演技を比較的抑え、親しみをこめて客席に語りかける。原作に忠実な演出だ。
 アンサンブルとは、全員の演技が実現の質を決めたこと。特に若いカップルの純粋さをかうが、佃井にはもっと表現の幅が欲しい。母役の斉藤由貴と鷲尾真知子に夫への愛情があふれる。相島はせりふの抑揚をもう一工夫したい、老人たちを演じたさいたまゴールド・シアターの俳優に存在感がある。
 稲本響のピアノ生演奏が、舞台の感情の動きを決めて、効果を上げたのは収穫だった。
 死者の目から見た、生の営みのかけがえのなさ、最後のこの場面でいつも胸がシンとする。
 他に出演は山本亨、増子倭文江、青木和宣、中村元紀ら。」
 
【ものがたり】
アメリカ合衆国ニューハンプシャー州グローヴァーズ・コーナーズという、小さな町。
 
1901年5月7日、日の出の少し前。
ジョージとエミリーは、同じ学校に通う幼なじみ。2人の頭にあるのは今日の宿題のこと、将来の夢のこと、そして、ほんの少しだけ気になっている隣の家の幼なじみのこと。いつもの朝、いつもの一日。
 
1904年7月7日、早朝。
今日はジョージとエミリーの結婚式。新たな家族を迎える2組の両親の、「結婚」に対する思い、新たな家族となる若い2人への願いが語られ、町の多くの人々の祝福を存分に受けながら、2人は幸せな結婚式を迎える。
 
1913年、夏。
丘の上の墓地でエミリーの葬式が執り行われている。それを、今はこの世のものではなくなった墓地の住人たちが見守っている。
「死者」の仲間入りをしたエミリーは、過去の幸せな日々を思い出しながら、自分にとって、家族にとって、人間にとって、世界にとって、いったい何が一番大切なのか、気づいていく。
 
*途中20分の休憩をはさんで3時間10分の長丁場を、人生とは何かと考えながら観続けた。
 稽古風景を見させてもらったときとは違って、内容の濃い演技になっていた。水谷さんの新翻訳により現代性が分かりやすく出ていると思う。宮田さんは客を迎え、また見送るという丁寧な挨拶をしていた。

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