2011年1月20日木曜日

「大人は、かく戦えり」 辛らつな口論 息ぴったりに

毎日新聞 劇評
『大人は、かく戦えり』(シス・カンパニー)
 
「フランスの劇作家ヤスミナ・レザの作品は、辛らつなユーモアを込めた会話劇で観客を巻き込んでいく。本作も、子供のケンカの後始末をしようとした親同士が、いつしか本音むき出しで“戦う”様を描きだして飽きさせない。徐賀世子訳、マギー演出。
 ヴェロニク(大竹しのぶ)とミシェル(段田安則)のウリエ夫妻は、アネット(秋山菜津子)とアラン(高橋克実)のレイユ夫妻を招いた。ウリエ夫妻の11歳の息子が、同じ年のレイユ家の息子に棒で殴られ、前歯2本を折られたための話し合いだ。最初はブルジョアジーらしい穏やかな会話だったのが崩れる。
 弁護士であるアランの携帯電話がきっかけだ。顧問を務める製薬会社の抗高血圧剤に重大な欠陥があるとのマスコミ報道にどう対処すべきか、次々と指示し始めたのだ。「男ならジョン・ウェインみたいに」と育ったアランは、この場所に出てくる気がなかったのだ。アフリカの虐殺問題などに関心の深いヴェロニクを、現実を知らないと批判までする。
 被害者と加害者の親という立場を超え、女性同士、男性同士で感じていることをぶつけだす。ミシェルに対し、ヴェロニクは「ニ流の人生でいいと決めちゃった男」と言い切ってしまう。
 日本人の夫婦ならここまで言わないかもしれない。けれど、現実にはもっと厳しい会話が交わされているのではないか。4人が息の合った好演。次は夫婦役を交換して見たい。
 30日まで新国立劇場小劇場」
(高橋豊)

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