2010年12月25日土曜日

正しい歯の磨き方

 現代の日本では、毎日歯を磨くことは当たり前になっていると言える。それにもかかわらず、成人の80%が歯周病にかかているのが現状。ある統計では、20歳までに28本あった歯が40代から急に抜け始め、70代になると平均12本までに減っている。それは、予防ケアがきちんとできていないことが原因。
 大抵の人は、歯の磨き方が自己流で、子供の頃に学校で教わったやり方を続けていたり、家族の磨き方に倣ってしまったりする。また、予防ケアというと、歯科医院での歯石取りやクリーニングと考えがちだ。自分で正しい磨き方を知って週刊づけ、まず歯垢を取り除くことを重視していない。
 歯垢1㎣の中には、1億個の細菌がいる。細菌が潜みやすい歯と歯の間などをしっかり磨かなければ、何十億個という細菌が口の中にすみつくことになる。それが虫歯や歯周病、口臭などを引き起こす原因となる。
 正しい歯磨きをするためには、道具にも気を配る必要がある。歯ブラシの材質はポリブチレンテレフタレートやナイロン製が良い。ヘッドは小さめ、毛並びは並行で、毛先が丸いものがお薦め。持ち手はストレートが使いやすい。
 磨き方は、歯をどうケアしたいかという目的によっていくつかあるが、歯周病を予防し、自分の歯を残したいとすれば、バス法が適している。歯ブラシを鉛筆の要領で持ち、ブラシの先を歯と歯肉の境目に向けて45度の角度に当て、1本ずつ左右に細かく20回程度振動させてかき出す。手鏡を持ってブラシの動きを確認しながら行い、さらに歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助用具を併用するといい。このとき、歯磨き粉は特に必要としない。
 毎食後に磨く必要はなく、就寝前などに1日1回で十分。磨き残しは20%くらいに抑えるつもりで、1本1本を丁寧に磨きたい。力加減が強すぎても弱すぎても具合が悪く、正しく磨けていれば、歯ブラシの毛は1年くらい乱れない。
 ただし、体質や歯並びは個々に違い、磨き方には人それぞれクセがある。自分に合った磨き方をするには、歯科医院で予防ケアを受け、適切な指導を受けることが不可欠。
 歯科医院を探す場合、自宅や会社から近くて安いなどといった条件ではなく、「なるべく歯を抜かない治療をしてくれる」など、自分の目的に合うことを第1条件とすべき。予防ケアは、信頼できるかかりつけ医との二人三脚で続けていくことが大事。
 歯磨きが、人生そのものに及ぼす影響は大きい。歯周病を予防したい。口臭をなくしたいなど、歯磨きの目的は人それぞれあるだろう。ただ、目先のトラブルにとらわれてばかりいると、将来を見据えることができなくなる。
 歯周病が悪化すれば、やがて歯が抜ける。歯の周囲の神経は脳と直結するため、歯が少なくなる分だけ脳を刺激する機会を失い、認知症などのリスクを高めると言われている。また、歯周病が口の中の毛細血管に入って全身を巡り、動脈の壁にすみつくことで、血液がドロドロになり、動脈硬化を引き起こしやすくなる。それが脳梗塞や心筋梗塞の原因になることもある。
 また、口の働きは、食べて健康を維持する以外にも、言葉を話す、笑うなどといった、動物にはできない人間としてのアイデンティティーを支え、社会性を備える原動力ともなっている。
 歯を健康に保つことは、健全な心と体を維持することにつながり、さらには有意義な人生にも結びついている。その意識を持つことが、毎日の歯磨きを見直すきっかけになると良いのだが。

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