2010年12月14日火曜日

杉並公会堂 小山実稚恵プレトーク を拝聴

平成22年12月14日(火)

杉並公会堂

グランサロン(地下2階)

19:15~20:30
 
小山実稚恵さんの来年1月の公演前のトーク
萩谷由貴子さんがインタビュアー。
小山さんは気さくに良く笑ってくれた。
 
今年がショパン生誕200年で
ショパンコンクールが開催されたことから
コンクールの審査員として頑張ったことについて
話がはずんだ。
今年は最終ラウンド10名中5名がロシア人であったが、やはりロシアは音楽的な伝統に裏付けられた素晴らしい才能が育っている。優勝者以外でもこれからが期待される才能ある若者が多かったとのこと。日本人は1次予選参加者は一番多かったが2次予選で全員敗退した。これについては、音楽性の狭さ、ショパンにこだわった練習など課題が多いとのこと。自分らしさをどのように発揮するか?これからどうように成長するか?可能性が試されていると。
今後も日本人の音楽教育には多くの課題がある。
 
小山さんは甘党だそうだ。
シュークリームが大好き。モンブランの好きだそうだ。
 
譜面を見るのが大好きで、新しい曲への挑戦もこれからも積極的に行いたいとのこと。
本当に素晴らしい演奏者であることが良く分かった。
 
小山さんがショパンで好きな曲は
「舟歌」や「子守歌」だそうだ。
 
■萩谷:第16回ショパン国際ピアノコンクールの審査員、いかがでしたか?
■小山:ショパン生誕200年という年にワルシャワに行けることは私にとってうれしい出来事でした。世界最高峰のコンクールで、そこでの審査ということもありますが、今の若く、頂点の人たちの演奏を聴くことができるという思いでいっぱいでした。コンクールですが、すべてのステージがまるでリサイタルのようです。まず一次予選ですでに30分以上一人が弾き、ニ次から一人50分ですから、私たちも毎日長い時間、1日8時間ぐらい聴くような生活が3週間近く続きました。
■萩谷:いったん会場に入ると聴き詰めで大変な毎日だったと思いますが、日常のようにピアノに触れられないことが苦痛だったのでは?
■小山:普段の生活では演奏会のための移動などで、ピアノに触れない日もあり、一日二日弾かないという事はそれ程珍しい事ではないのですが、今回は3週間滞在してたったの5時間ぐらいしかピアノは弾けなかったのです。ホテルの審査員の部屋には、主催者のほうで電子ピアノを用意してくれましたが、朝10時から始まるので9時半頃ホテルを出発し、それから2時過ぎまで審査し戻ってきて、また4時半にホテルを出発して、夜の9時ぐらいまでかかりましたので、その合間に電子ピアノに触れる気分になれず、ショパンの命日の前日にピアノをお借りして弾きましたが、もうそのときは、生き返ったような気持ちがしました。
■萩谷:コンクールは10月3日から始まり20日まででした。その期間中の10月17日がショパンの命日にあたります。その昼間に、ショパンの生まれた村、ジェラゾヴァ・ヴォーラというワルシャワ近郊の村ですが、そこにショパンの生家が残されておりまして、そちらで小山さんはピアノを演奏されたんですね。
■:小山:ショパンの作品を、生家で演奏するっていう話がNHKの方からありまして、私も生家で演奏したいなってことをちょっと言いましたら、それが実現しまして。ピアノは生家にあったもので演奏しました。
■萩谷:どんな気分でした?
■小山:もう190何年、生まれたときからちょうど200年、ずっとその土地が息づいて、時は立っているけど同じ空気を吸っているのかなと思うと、すごく感慨深くて。
■萩谷:記念の年に生家でピアノを、また命日にお弾きになるっていうのは、またとないことだと思います。しかし審査の大役は激務で、また長い時間聴かれるということもあります。審査員は今回12名いらしたんですが、協議され意見を調整され、採点し、最終的に結果をお出しになるにあったてご苦労がおありなのでは。
■小山:予選の段階では、点数と、その次のステージに進めるかどうかをイエス・ノーで決めることをしなければいけなかったのです。すごく個性が皆さん強くて、ですからどれだけ自分のもの・自分の気持ちを出すかということが大切だとはしみじみ感じました。その訴えたいもの、考え方、それから感じていること…を、ピアノという媒体を通してどう伝えていくかということの難しさも、すごく感じました。
■萩谷:前回までは審査員が20名ちょっといらいっしゃいました。その約半数がポーランドの方で現役ピアニストより教授の方々が多かったのです。ところが今回からすごく変わりまして、審査員も12名でその中に教授もいましたが、現役のピアニストの方がたくさんいらっしゃいました。やはりピアニストの、自分も演奏家であるという立場からコンテスタントの演奏を聴かれると、議論も百出したのでは?
■小山:基本的にはその演奏家について、審査の結果が出るまでは話をしないーということなのですが、みんなすごく情が激しく、語らずにはいられない。演奏が終わって横の…ロビーの横が、あるところだけ審査員用にブロックされていて、そこで飲み物と簡単な軽食がとれるのですけれどそこでは、解釈のことから自分が感じていることからいろんなお話がでていました。
■萩谷:最終的に結果のところですけど、12人の審査員の方々が、自分がこの人が1位だと思うコンテスタントに「1」つkるんですね。それを合計して一番点数の少ない人が、1位になるという方法でした。数字なので、まあ公平といえば公平です。そして、ユリアンナ・アヴデーエワというロシアの25歳の女性が、アルゲリッチ以来45年ぶりの1位ということになられました。
■小山:すごくよく考え抜かれていて、細部にわたるまで突き詰めて…確実な技巧もありましたし、どのステージも立派な演奏だったと思います。
■萩谷:そして2位はやはりロシアのルーカス・ゲニューシャス(20歳)、それとインゴルフ・ヴンダーというオーストリアの25歳の若者が、同列2位でした。
■小山:ゲニューシャスは、私は個人的には好きだったのですが、巨大な建築物的な、モンスター的な、ちょっと得体の知れないような凄みみたいなものが演奏の中にありました。ショパンも素晴らしかったですが、ロシア物とか大きな作品はすごく聴いてみたいなという衝動に駆られました。またバッハも素晴らしいんじゃないかと感じました。そして、ヴンダーというオーストリア人、非常に正統派で完成されたといいますか。コンクールというのは、これからいろんな世界に出て行くというか、門を開けるというような意識でいたのですが、ある程度いろんな経験も積み、自分のカラーやスタイルを身につけて、完成された出場者がすごく多かったです。
■萩谷:既にプロとしてしっかりやってらっしゃる方たちが、さらにプロの度合いを試されるような場であったような印象を受けました。
3位が、ロシアのダニール・トリフォノフという若者。
■小山:とても新しいタイプの、ユニークといっても解釈がユニークというわけではないのですが、非常に夢を感じさせる演奏家。非常にきらびやかで明るい音を持っていて…姿もまたショパンに似ているという評判でした。
■萩谷:ロシアのピアニストが今回大活躍したのですが、その辺はいかがでしょうか。
■小山:本選に10名残りましたが、その中の5人がロシア人だったのです。その5人はそれぞれ、順位はついてしまいましたが、すごくカラーも違い、主張も強かったですし、更には立派なテクニックがあり、音楽に対する意識がありで、若い人たちなんですけど、見事だと感じさせる、入賞の中に名前は出てこなかったのですけど、すごく若く…ホジャノフ。特に一次はもう忘れられない、ほんとに素敵なピアノだったのです。
■萩谷:次回にきっと上位に入ると思います。非常に話題性のあったピアニストでした。日本勢は残念な結果に終わったのですが、日本のピアノを学ぶ方たちがどういう勉強をしていったら、将来的に、よい結果が生まれるとお感じですか?
■小山:音楽に関係なく何でも物事を進めたり、自分がいいと思って表現するっていうときには、そのしたい物だけをしたのでは、たとえば絵を描きたいと思ったら絵だけ、その芯だけやるんではだめだと思います。それを感じる心だったり、もう少し長い期間を要して作り上げた何かそういうものがいると思います。非常にピアノはうまく弾けているんだけれどということを意見でよく聞いたので、たとえばほかの世界をたくさん楽しむとか、ピアノだけでなくて音楽もほかの分野のものであったり、それからまったく違う世界のことでもいいと思うのですけど、譜面からだけピアノを見ないということが必要…譜面は見るんだけれど、見方は譜面からだけではなくということが必要だと思います。
■萩谷:ゲニーシャスは、本を読むのが好きだと言っていまして、ロシア文学や、シェイクスピアを読み特に文学作品に触れるということを通じて音楽のイメージを膨らませて…という訓練もきっとやっているのではないかと。トレーニングだと思わず、そういうものに触れたい、時間があったら本も読みたいという感性を持っている、そういうピアニストと感じました。でもほんとに3週間も大変な審査員生活を経験して、お帰りになってすぐコンサートで素晴らしい演奏をなされるっていうのは、いったいどれぐらい蓄えっていいますか(笑)あられるのかなあって思います。
■小山:今回感じたのは、私も学生のころはピアノを練習するといったらピアノの楽器と直結していたんです。しかしある時、違うんじゃないかと。小さい時は指が、まず物理的に動きませんから動かす、ただある年齢にきたらテクニック的なことが練習によって飛躍的に進歩するということとは違い、どのようにしたらどういう音が出せるかという、伝えることが非常に大切な気がしてきて、その時、ちょっとピアノから離れたところでこういう音を出したいとかそういうイメージをはっきり持つようにしていました。そんな時、私はスポーツを見るのが好きなんですが、体操の具志堅選手が、何かで体を壊されたとき、実際にトレーニングは出来ない状態だったんだけれども頭の中で、たとえば平行棒だったら平行棒の最初から、このような、ここの筋肉をこう使ってこうやってこういう形でやって…って最後の着地までをシミュレーションして、そしたらその後に体が動かせるようになったときにすごく判ったっていうことを聞いたんです。まずは自分の中にこう弾きたいとか、自分はこの曲ではこうっていう明確なイメージをまず作ると。で、それにどうやったら近づけるのだろうかということを、たとえば深い音を出そうとした時に、もちろん深い音をやるのに表面にたくさんたっぷりと触れば、細かいところで点で触るより面で触れば深い音は出ますが、ただやっぱりそこで深い音を思うことが大切だと。軽い音も、軽い音を思うことが自分の体も作ることにつながる。
■萩谷:イメージトレーニングができていらっしゃる。
■小山:そうすると、時間はもう無限にあって、たとえばどんなときでもそれは出来るし、思っていることは自分にとっては幸せな時間になります。

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