2010年12月4日土曜日

読書 『改訂版 この厄介な国、中国』 岡田秀弘著

岡田秀弘著
『改訂版 この厄介な国、中国』を読む。
 
表紙裏に
「日中の国交樹立は1913年。漢族は2世紀に消滅。漢字が読み書きできる中国人はほんの一握り!
経済的・軍事的に拡大し続ける彼の国と隣人であるかぎり、日中関係はますます緊密化の度合いを深めざるをえない。しかし誤った中国イメージのままでは、日中関係の将来設計、米中関係の判断をも誤る恐れがある。われわれは、「彼らについては何も立ちもどり、いま一度中国および中国人との付き合い方を検証してみる必要があるのだ。」
 
今本当に厄介な国として戸惑いがあるが、この本は本当に面白い。
 
まえがきにて著者は
「日本では多くの人が「中国は四千年という悠久の歴史を持った国」と思い込んでいる。しかし、漢族の中国は、紀元前221年の秦の始皇帝の統一に始まり、後漢の184年に至るまでの400年のことに過ぎない。それからあとは北方から匈奴や鮮卑が侵入し、漢人を駆逐して居座ってしまった。589年の隋の文帝の南北統一は、そうした北族の中国占拠の完成である。その後、北族はふたたび大挙して中国に侵入して、1276年にはまた新しい北族、すなわちモンゴル族が席巻した。その後裔が満州人で、1912年まで中国人と言えば、清朝の支配層である満州人のことだった。清朝が倒れたあとの1913年に歴史上初めて、日本と中国の間で正式に国交が樹立されたのである。
 つまり、日中間の関係は、まだ百年にも満たない短い付き合いでしかない。われわれ日本人は「中国について何も知らないかもしれない」との発想に立ち戻り、いま一度中国人との付き合い方を検証してみる必要があるのではないか」といっている問題意識が満載の本である。
 
第1章
外交問題は、すべて内政問題
 けっして本心を明かさない、中国人の行動原理とは
第2章
他人はすべて敵と考える民族
 なぜ彼らは、自分以外の人間を信用できないのか
第3章
現代中国語は、日本語から作られた
 統一言語なき国家
第4章
中国現代化の原動力・秘密結社
 「裏の中国史」が動かす「表の中国史」
第5章
集団の行動原理なき国
 日本人は、いかに彼らと付き合うべきか
 
中国は中国である限り、永遠に変わらない
「中国共産党の本質は、国民国家というベールをまとった皇帝システムである。つまり、共産党は皇帝であり、二千年来つづいてきた“正統”の後継者なのである。
 だが、それも無理はない。中国大陸は、あまりにも広大であり、また、それを構成している民族の歴史や文化といったものもあまりにも違いが大きすぎる。結局、中国なるものを統治するシステムは、秦の始皇帝以来の「皇帝システム」以外にないのである。
 先ほども記したように、日本人もアメリカ人もやがては中国も近代化すると思っている。しかし、中国が近代化を実現するときは、中国が崩壊するときである。少数民族による自治や、言論の自由といったものを実現させれば、中国というシステムはその瞬間に消えてしまう。
 これは、中国人そのものに問題があるのではない。結局、近代国家にはサイズの上限というものが存在するということなのである。
 その好例が台湾である。台湾は、国土の大きさも人口も、国民国家としてきわめて適正なサイズである。また、強制的ではあったが、曲がりなりにも北京語が共通語として機能している。台湾人の北京語にはひどい台湾訛りがあるが、それを訛りと考えず、独自の言語であると考えれば、それは充分、台湾の国語として通用する水準にある。
 しかも、台湾は五十年間日本に統治されたことで、台湾人としての連帯感を持つことができた。だから訛りを恥じず、それが台湾独自の言語なのだという意識が持てれば、国民国家にスムーズに移行できる条件がそろう。」
「繰り返すが、いまのままの“中国”が本当に近代化することは、未来永劫ありえない。中国は中国であるかぎり、秦の始皇帝以来の皇帝システムによる支配をつづけていかざるをえないのである。万が一、そのシステムが崩壊するときがあるとすれば、それは中国が中国でなくなるとき、つまり皇帝システムとともに中国も崩壊するときである。結局、中国は中国でありつづけるかぎり永遠に変わらないーこれが私の結論である。
 その中国という存在が、いつの日にか崩壊することがるのか、それとも赤い皇帝が永遠に君臨しつづけるのか。それは誰にも分からない。
 だが、ただひとつだけ間違いなく言えることがある。それは日本が中国の隣りに未来永劫にありつづけるということであり、日本人は否が応でも中国人という世界にも稀な行動原理を持つ人々と付き合っていかなければならない、という事実である。
 日本という国家は、その建国からして中国という存在を抜きにしては語れない国である。日本人が日本人であるかぎり、中国という存在はつねに最大のテーマであることに変わりはないのだ。」
 
 本当に素晴らしい本だ。
 満州事変と日中戦争への流れを一度じっくりと考えてみたい。著者によれば国民党と日本が近づくのを阻止するために中国共産党が細工をして日中戦争への流れを作ったとのこと。そこから日本軍国主義批判が続いている。また、外交問題は、すべて内政問題とはその通りだと思う。
 この本をじっくり読んで落ち着いて中国の動きを追っていきたい。

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