2012年10月15日月曜日

毎日新聞・劇評「演劇:「リチャード三世」 岡本健一が悪を魅力的に造形=評・濱田元子」

毎日新聞・劇評より
この前観てきた劇なので参考に。
毎日新聞 2012年10月15日 東京夕刊

演劇:「リチャード三世」 岡本健一が悪を魅力的に造形=評・濱田元子

「醜く生まれつきながら謀略と殺戮(さつりく)を尽くし王座に駆け上がるリチャード三世。シェークスピア史劇の有名な悪党の一代を、業をむき出しにしながら時に小気味よく、岡本健一が魅力的に演じている。鵜山仁演出。
 新国立劇場で2009年に9時間かけて上演された壮大な「ヘンリー六世」3部作の、いわば続編となる作品。演出はじめ、同じリチャード三世役の岡本、ヘンリー六世の妻マーガレットの中島朋子、ヘンリー六世の浦井健治(今回はリッチモンド伯ヘンリー、後のヘンリー七世)らキャストが再集結しての上演は、新国立だからこその刺激に満ちた意義ある試みだ。
 ヨーク家とランカスター家間の30年にわたる薔薇(ばら)戦争。流された多くの血を吸い込んだような赤砂の殺伐とした舞台(美術・島次郎)で、リチャードの夢と野望、マーガレットの呪いが交錯する。
 エドワード四世(今井朋彦)の王座を狙うグロスター公リチャード(岡本)は、継承者を次々と亡き者にし王位につくが、造反貴族たちが亡命していたリッチモンド伯を掲げボズワースの戦いで対決する。中島に不気味な存在感。リチャードと好対照をなすリッチモンド伯を、浦井がさわやかに好演。
 リチャードの盛衰とともに、権力にすり寄る人間のあさましさも映し出される。おそらくいつの世も、もちろん現代も、変わらぬその姿は、愚かしくそして滑稽(こっけい)ですらある。【濱田元子】
 21日まで、新国立劇場。」

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