毎日新聞 3月3日 夕刊
濱田元子
「ナチス政権下のベルリンを舞台に、宣伝大臣ゲッペルスら、芸術と政治の狭間で翻弄される人々を描く三谷幸喜の新作舞台「国民の映画」。理想の映画を作ろうとするゲッペルスを演じるのは小日向文世だ。「無邪気な少年の顔があったり、冷酷無比な顔があったり、そういう振り幅大きい役はとてもやりがいがあります」と話す。
あらゆる芸術をプロパガンダのために利用したナチスドイツ、ヒットラーの片腕ゲッペルスは、ナチスと手を結んだ映画監督(風間杜夫)らさまざまな立場の映画人を集めてホームパーティを開き、ドイツ国民が誇りに思うような「国民の映画」を作ると発表する。しかしそこに招かざる客ヒムラー親衛隊長(段田安則)とゲーリング空軍元帥(白井晃)が姿を現す。虚実交えた群像劇だ。
「人間関係の中で人間のずるさとか弱さが垣間見えるおかしさは、三谷さん独特の笑いのセンスですよね」と小日向。「背景にはユダヤ人虐殺という犯罪がありますから、今までの作品とは異質な感じがします。演じる方も覚悟がいるますね。書かれているゲッペルスを息づかせたい」と意気込む。
1977年に劇団に入団。舞台出身だが映像の世界での活躍も幅広い。「23歳で役者を始めて、気分は20~30代前半なんです。アルバイトやりながら徹夜で芝居を作っていた、あのころの気分が抜けてないんです」。エネルギッシュな活動の原動力はそのあたりか。せりふのけいこもあらゆるところでする。「お風呂に入っても『あのシーンやってみよ』ってリラックスできないんですよ」と笑う。
「常に現場に立っていたいなって思います。せりふ覚えるの大変だし、いろいろあるんですが、うれしい悲鳴ですね」。芝居への愛あふれる舞台が楽しみだ。」
6日~4月3日、東京・渋谷のパルコ劇場。ほかに大阪、神奈川でも。
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