2011年3月5日土曜日

粟谷能夫が「鸚鵡小町」 父・新太郎十三回忌追善

毎日新聞 3月3日 夕刊
小玉祥子
「能楽シテ方喜多流の粟谷家による第89回「粟谷能の会」が6日午後1時から国立能楽堂で開催される。同会を長年主催し、1999年に80歳で没した粟谷新太郎の十三回忌追善となる。
 新太郎の長男の粟谷能夫が「鸚鵡(おうむ)小町」のシテ、おいの粟谷明生が「一角仙人」のシテをそれぞれ初めてつとめる。
 「鸚鵡小町」は100歳の小野小町がシテ。帝(みかど)の歌を届けられた小町が返歌を「鸚鵡返し」に詠み、在原業平の姿を追憶しながら舞を舞う。
 「老女物で『卒塔婆(そとば)小町』と『鸚鵡小町』のどちらか、という時に、おやじは『鸚鵡』を選んだ。劇的なものよりも美しいものを目指しているのかなという印象を受けました」と能夫。「小町は昔日の栄光も消え、落ちぶれている。達観しているところもあり、容色の衰えた絶望もある。一方で年を経たことからの強さも出てきている。そういうものが非常によく描かれています」
 父は「目標であり、師匠であり、支えになってくれた存在」という。「追善能には感謝の思いも込められています」
 「一角仙人」は通力を持つ仙人がシテ。彼が封じ込めた竜神を解き放つ任務を負って王から旋陀夫人(せんだぶにん)が派遣される。その色香に迷った仙人が酔いつぶれている間に竜神は逃げてしまう。新太郎の弟で、明生の父の菊生が好んで度々手がけた。
 「父のシテでツレの旋陀夫人を何回もやっています。父は非常にコミカルな色気を出すような演出をしていました。そこから離れようと思っていたのですが、稽古をしている間に似てきたような気がします。『鸚鵡』がしっとりとした曲ですので、対比が出ると思います」
 ほかに狂言の「六人僧」(野村万作、萬斎、石田幸雄)。」

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