2011年3月2日水曜日

情感豊かな歌、躍動感ある踊り ミュージカル 宝塚雪組「ロミオとジュリエット」

日経夕刊 3月1日
編集委員 河野孝

「情感豊かな歌、躍動感ある踊り
ミュージカル 宝塚雪組「ロミオとジュリエット」
 
 シェークスピアの恋愛悲劇「ロミオとジュリエット」が華麗な宝塚ミュージカルに生まれ変わった。特に「愛と死の純愛物語」として、優美で躍動的な作品になっている。
 フランスのG.プレスギュルビックが2001年にミュージカル化した作品を小池修一郎が潤色・演出、雪組トップに就いた音月桂のお披露目公演用の新バージョンだ。ロミオ役を務める甘いマスクの音月がロマンチックな魅力を発散する。
 イタリアのベローナで長年争いを続けている名門のモンタギュー家とキャピレット家。モンタギュー家の跡取り息子ロミオと、キャピュレット家の娘ジュリエット(夢華あみ、舞羽美海のダブルキャスト)が両家の憎しみを超えて愛し合う物語である。
 冒頭に愛と死を象徴するダンサーが登場し、身をくねらせて神秘的に踊る。善と悪の天使のような存在で、舞台全体に運命論的な影を落とす。
 情感豊かな曲が多く、登場人物の心の内をダイレクトに歌い上げる。また踊りに躍動感がある。両家の若者が対立して踊る場面は「ウエスト・サイド物語」の興奮を思い出させる。ロミオとジュリエットの2人が踊るところはバレエでいえば「パ・ド・ドゥ(2人のステップ)」だ。
 ドラマの独自な読み込みも。ロミオの親友マーキューシオ(早霧せいな)を殺すジュリエットの従兄ティボルト(緒月遠麻)も単なる敵役ではなく、大人に憎しみを植えつけられた悲しみを吐露、内面の葛藤に切り込んでいる。
 死によって永遠に結ばれた2人は両家の憎悪が生み出した悲劇だが、贖罪の羊に見えた。イエスが人間の罪を背負って処刑されたように、2人は両家の罪と憎悪を負って和解をもたらしたのだから。」
20日まで東京宝塚劇場。

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