2012年2月18日土曜日

気になる記事 日経「食後すぐの歯磨きはNG 虫歯予防の新常識」

日経 2012年2月11日
『食後すぐの歯磨きはNG 虫歯予防の新常識』

「毎日何気なく磨いている歯。タイミングや道具の使い方など、その磨き方で本当に歯を大事にできているのだろうか。実は最近の研究で判明してきた新しい注意点もある。これからも長い間、自分の歯と付き合うために、専門医に歯磨きの最新の常識を聞いた。
「冷たい水がしみて耐えられない」。痛みを訴えて来院した20代女性の口の中を見ると、まるで歯科器具で削ったかのような丸っこい奥歯があった。歯の表面のエナメル質が減り、中の象牙質が見えていた。
聞いてみると女性はコーラ飲料が大好きで、しかも飲み込む前にいったん奥歯の近くにためるクセがあった。コーラ飲料はとても強い酸性。体の中で最も硬いとされるエナメル質も、酸性では軟らかくなり溶け出す。頻繁に強い酸性にさらされればすり減る。。「食習慣と飲み方のクセで起きた『酸蝕歯(さんしょくし)』」と東京医科歯科大学の北迫勇一助教は説明する。
虫歯、歯周病に続く第3の歯の病気として注目される酸蝕歯。欧米では20年前から対策がとられてきた。食生活の欧米化に伴い酸性の飲食物が増えた日本でも6人に1人は何らかの症状があるとされる。タイミングを間違えた毎日の歯磨きが歯のすり減りを加速させることも分かってきた。
口の中が酸性になっても、唾液の力で中和されて溶けたエナメル質も復活する。ただし、30分ほど時間がかかる。食後すぐに歯をゴシゴシと磨くと軟らかくなったエナメル質を削り落としかねない。とはいえ、自分が食べた食事が酸性かどうか見分けるのは難しい。そこで「食後は歯磨きまで30分ほど置くのが安全策」(北迫助教)。
体を思って毎日とる黒酢やかんきつ類、夏の熱中症予防に小まめに飲むスポーツ飲料など、酸性の飲食物は意外に多い。歯も気遣って口の中が酸性の時間はできるだけ短くしたい。ダラダラ飲食を控える、酸性と分かっている飲み物はストローで飲む、飲食後は水やお茶で口の中を軽くすすぐ、といった予防策がある。
歯を磨くタイミングだけではなく、回数についても常識は変わりつつある。よく「毎食後すぐに3分間」といわれたが、「なんとなく3回磨くよりも1日1回、特に寝る前に口の中から徹底的に汚れを出すことが大事」と鶴見大学の桃井保子教授は強調する。
歯を磨く一番の目的は、虫歯や歯周病の原因菌の住みかになる歯垢(しこう)を取り除くこと。歯の表面につく黄色いねっとりしたものだが、今のところ歯ブラシなどで物理的にこすり落とすしかない。
口の中の食べカスが歯垢になるまで48~72時間かかる。毎食後に歯を磨けなくてもまだ間に合う。寝ている間は唾液が減って口の中の菌が増えやすくなるので、寝る前に口の中をきれいにするのが効率的だ。磨き方は、歯ブラシの軟らかい毛先をうまく使って歯垢を取るスクラッビング法やバス法などが最近主流だ。
ただ、何時間がんばっても歯ブラシで落とせる歯垢はせいぜい60%。限界もある。それが歯と歯茎の狭いすき間まで届くデンタルフロスを使うと86%まで上がる。海外ほど浸透していないフロスだが、日々の手入れに取り入れれば効果はずいぶん高まる。

フッ素の活用も

歯磨き粉についても考え方は変わってきた。かつては研磨剤が歯を傷つけることや、素早い泡立ちが磨けた気にさせることなどで否定的な意見が多かった。最近は技術の進歩で研磨剤なしでも汚れが落とせるようになり、歯を丈夫にするフッ素入りも増えた。成分表を見れば簡単に分かるので「フッ素を大いに活用すべし」と桃井教授はいう。
2センチメートル大の歯ブラシのヘッドなら、その3分の2くらいにたっぷり歯磨き粉を絞り出して歯茎に塗り込む感覚で使う。水で流れないように磨いた後の口のすすぎは最小限に抑える。低濃度でも歯が長時間フッ素に接することで効果があるので、毎食後に歯を磨ける人は歯に小まめにフッ素を与える機会になる。
時にはプロの助けを借りて日々の手入れが行き届いているか確認することも必要だ。「歯石取りを兼ねるなど、せめて半年に一度は歯科医院で状態を見てもらって」と専門家は口をそろえる。

忙しい時、ガムをかむ手も

忙しくて歯を磨けないときに緊急策として使えるのがガムだ。唾液が出て口の中の汚れを流してくれる。砂糖不使用やフッ素入りのガムもある。水道水にフッ素を入れるなど海外には日本と比べてフッ素を虫歯の予防に積極的に使う国が多い。長時間かみ続けられるガムなら、同じような効果が期待できる。
奥歯まで1本ずつ歯を丁寧に磨くために歯ブラシは小さめのヘッドがいいとされてきた。ただ、小刻みな動きが苦手な人には使いこなすのが難しい。そんな人向けに一度に広い面積を磨けるように細くて軟らかい毛をたくさん使った大きめヘッドの歯ブラシもある。歯科医院など限られた場所でしか売っていない道具もあるので、自分に合うものが何か通院時に相談してみるのも手だ。」
(鴻知佳子)
[日経プラスワン2012年2月11日付]

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