東京藝術大学 平成22年度 学内演奏会 作曲
平成22年11月26日(金)
14:00~15:50
奏楽堂にて
1.三橋哲也 永劫の番人と虚無の塔
田中拓也 Sop. & Alto. Saxophone
福田亨 Alto. Saxophone
丸場慶人 Ten. & Bar. Saxophone
日置彩乃 Trumpet
鳥越崇裕 Trombone
亀井博子 Parcussion
入川奨 Parcussion
三橋哲也 Conductor
・プログラムノート
曲名である、『永劫の番人と虚無の塔』は、私が大好きなゲームの表題に因んで付けました。
価値のない塔を、限りなく長い年月を守ってきている番人。これを舞台に、その場面背景や塔の内部をイメージして創りました。
どこか神秘的な、しかし高圧的なところがある、そんな音楽をお聴きいただけたらと思います。
2.齋藤のぞみ 1)ポロックのアトリエ
2)洗濯船
袴田智子 Flute
安部友紀 Oboe
須東裕基 Clarinet
・プログラムノート
1・ポロックのアトリエ
点が線になって画になる。音が延びて、埋め尽くされる。
2・洗濯船
洗濯船は芸術家たちのたまり場でした。交錯する主張、近似値の衝突も時間に包まれて、夢の中にいるかのような浮遊感。風が何かを連れ去ったように、音楽も誰かを運びます。
3.堀優香 Fuzzy drop
Ⅰ.moco
Ⅱ.accent
近藤香緒里 Flute
亀井博子 Vibraphone
入川奨 Percussion
・プログラムノート
あるときは、3人それぞれが独立して流れていくような、同じ場所を漂うような…。
またあるときは、3人が渾然一体となって突き進むような、すべてがバラバラに飛び散るような…。
3人で作り出すさまざまな空間は、どれも性格が違いますが、その境目はなんとなく曖昧で、それもひとつの場面です。
発音点から音の余韻まで、強いこだわりを持ってこの音楽を作ってくれた3人に、心から感謝します!
「曖昧さ」を作り出すには、正確なパルスとぬかりない気配りが、実はとても大事なんだ!と強く実感しました。
3人の素晴らしい演奏家の呼吸を感じながら、アンサンブルをお楽しみください。
4.小田朋美 『少女はおしっこの不安を爆破、心はあせるわ』
詩:川上 未映子
薬師寺典子 朗読
大澤久 Violoncello
・プログラムノート
「少女はおしっこの不安を爆破、心はあせるわ」(青士社『先端で、 さすわ さされるわ そらええわ』著 川上未映子)から抜粋したテキストによる作品。
<湯の中でおしっこをしてもいいお母さんしてはいけないお母さん/どうしてあたしはいけないお母さんの子に生まれたの>
に始まる問いの連続、増殖、加速、
おにょきと視てる - 穴
尿でもなく小便でもなくいばりでもなく。
生きている何やかやすべてを一瞬にしてしゅっと収斂してしまう、などと言ってしまいたくなるほど不毛でばかばかしい語感は重量そのもの、確かに言葉。
プログラムノートを考え始めて半日以上経っているのですが、ちっともまとまらないので、おしっこでもしてきます。
*薬師寺典子さんのソプラノの声での朗読とチェロが相まって非常に面白かった。
小田朋美さんに今後とも注目したい。
5.横山未央子 ピアノ三重奏曲
土屋杏子 Violin
福井綾 Violoncello
日高志野 Piano
・プログラムノート
ピアノ三重奏という編成に惹かれるものがありました。曲は3つの楽章から成ります。
この土地に根づいている「間」とはどのようなものだろうと考えたところ、まず民謡や大衆芸能に対して知らないこと、できないことが沢山ありました。
そこで色々勉強してみましたが、容易に体に染みつくものではありませんでした。
けれど、やるとやらないとでは確かな差があったと信じています。
自分の触れてきたことが少しでも作品に反映されていることを願っています。
6.子鹿紡 ピアノのための小品
子鹿紡 Piano
7.首藤健太郎 「八木重吉の詩による3つの歌曲」
1.胡蝶
2.剱を持つ者
3.哀しみの海
板倉まなみ Soprano
安藤綾花 Clarinet
矢口里菜子 Violoncello
阿見真依子 Piano
首藤健太郎 Conductor
・プログラムノート
何か歌曲を書きたいと思い、自分の創作意欲が刺激されるものは何かと、詩を探しているうちに、八木重吉の「秋の瞳」に出会うことができました。その中から任意に3つを選びました。どのような編成で書こうか迷いましたが、以前から挑戦したいと思っていた「ソプラノ・クラリネット・チェロ・ピアノ」で作曲しました。
1曲目「胡蝶」は、実際に生きている蝶の動きも観察し、詩に沿ってそのイメージがうまく表現できないかを試みました。
2曲目「剱を持つ者」では、怪しいスケルツォのような楽奏と、器楽によるカデンツァと歌によるレチタティーボを組み合わせる構想が浮かび、それを実現させようと思いました。
3曲目「哀しみの海」は、それは一体どのような音なのか、悩みながら書きました。
最後に、ご指導くださった先生方、演奏者に、心より感謝いたします。
①胡蝶
へんぽんと ひるがへり かけり
胡蝶は そらに まひのぼる
ゆくてさだめし ゆえならず
ゆくて かがやく ゆえならず
ただひたすらに かけてゆく
ああ ましろき 胡蝶
みずや みずや ああ かけりゆく
ゆくてしらず とももあらず
ひとすぢに ひとすぢに
あくがれの ほそくふるふ 銀糸をあへぐ
②剱を持つ者
つるぎを もつものが ゐる、
とつぜん、わたしは わたしのまわりに
そのものを するどく 感ずる
つるぎは しづかであり
つるぎを もつ人は しづかである
すべて ほのほのごとく しづかである
やるか!?
なんどき 斬りこんでくるかわからぬのだ
③哀しみの海
哀しみの
うなばら かけり
わが玉 われは
うみに なげたり
浪よ
わが玉 かへさじとや
*それぞれの作曲者の思いを込めて素晴らしい演奏を聞かせてもらえた。
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