平成22年11月25日(木)
東京藝術大学
奏楽堂
モーニングコンサート 第11回
藝大フィルハーニア 演奏
指揮:広上淳一
前半
◆横山未央子 (4年) Mioko Yokoyama
横山未央子:管弦楽の為の<螺旋> (演奏時間約10分)
1989年生まれ。
2010年、学内にて安宅賞受賞。
現在、東京藝術大学音楽学部作曲科4年在学中。
横山さんよりのメッセージ
“巡る”ということを考えて作曲しました。
ラ、レ、ミ、ソ、それぞれの音を中心とする4つの部分が繰り返されます。そしてその4つは登場するごとに互いに融合し、激しさを増します。
一直線に進むのではなく、同じところを巡りながら次第に拡大されてゆく、という構成の形から<螺旋>と名付けました。
また、血が沸くようなものを作りたいと思いました。
その思いは、私の関心(民謡や祭囃子、かけ声など土地に伝わるもの)から何か影響があるのかもしれません。
いらして下さった皆様に楽しい10分間を送っていただけたら、本当に幸せです。
*管弦楽の楽曲を作曲するのは大変だと思う。10分間は短くない。広山さんの指揮もダイナミックで管弦楽も思いを伝えていた。素晴らしい演奏。
後半
◆實川風 (3年) Kaoru Jitsukawa
S.プロコフィエフ:ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 op.26 (演奏時間約29分)
1989年生まれ。第77回日本音楽コンクールピアノ部門第3位。
現在、東京藝術大学音楽学部器楽科3年に在学。
實川さんのメモ
セルゲイ・プロコフィエフ(1891-1953)はロシアの近代音楽界を代表する作曲家の一人です。早くから頭角を現していたプロコフィエフでしたが、1917年のロシア革命の勃発を受けて、自由な創作への強い野心に突き動かされ、内戦で混乱の続く祖国から、アメリカへ行くことを決意しました。途中、日本に経由地として約2カ月滞在し、ピアニストとして自作の作品によるコンサートを開いています。
アメリカやパリに居を構え、創作や演奏・指揮に携わっていましたが、1934年に、祖国ロシアでの永住を決めます。ソヴィエト社会主義国家の建設に伴う芸術への政治介入、そして第二次世界大戦開戦という不安定な情勢の中、亡くなる直前まで、常に前向きに自身の創作活動に力を注ぎ続けました。
プロコフィエフの音楽は、後期ロマン派の音楽で蔓延してしまった「感傷」や「虚飾」を排し、鋭利で新鮮な感覚に基づいた新しい語法を常に模索しています。しかし、プロコフィエフの目指したものは、常に自己の内面からの欲求に基づいた、人の気持ちを動かす「真面目な」音楽であり、作曲が技巧に走ることを嫌いました。プロコフィエフはいくつかの小説も書いており、それについて自身の日記に、「単にいいものを書くのはまっぴら」と記しています。彼の創作への態度として、作曲と相通じるものを感じます。
ピアニストでもあったプロコフィエフは、ピアノ協奏曲を5曲、ピアノソナタを9曲、そして、幻想的でユニークなピアノのための小品を多数残しました。ピアノ協奏曲第3番は、作曲家が祖国から新天地に移った、1917年から1921年にかけて作曲され、1921年に自身の独奏によりシカゴで初演されました。それ以来、ピアニストの重要なレパートリーとして定着し、彼の代表作の一つとなっています。「野性味」「息の長い抒情的な歌」「哲学的な瞑想」「素朴なダンス」「皮肉たっぷりの口調」「おとぎ話のような幻想味」といった多彩な要素が、まるで絵巻のように繰り広げられます。
元来の協奏曲は、オーケストラが主に伴奏に回り、独奏者のソロによる長大なカデンツァが置かれ、独奏者にスポットを当てるものでした。しかし、この曲ではピアノとオーケストラは常に会話をし、時に口論となりながら、対等に拮抗する物として描かれています。
第1楽章 4分の4拍子 Andante Allegro
クラリネットから序奏が始まり、活気づいた弦の動きとともにAllegroの主部になだれこみます。ピアノが終始輝かしく、縦横無尽にかけめぐる楽章です。
第2楽章 4分の4拍子 Andantino
テーマと5つの変奏曲、最後にテーマへの回帰となっています。オーケストラだけで奏されるテーマは、どこかユーモラスでカクカクと動く人形のようです。続く5つの変奏曲は、それぞれ個性あふれる性格をもっています。
第3楽章 4分の3拍子 Allegro ma non troppo
3拍子の強烈なアクセントを伴った、舞踏のリズムが打ち出される、暴力的なまでに粗野な舞曲。間に幻想的で抒情的な部分をはさみ、最後はテンポを上げ、渾然一体となってクライマックスを作ります。
全体を通して、ピアニストには難技巧が要求されていますが、全ての音が強い意味と力を持った、選ばれた音で書かれた作品だと思います。
*素晴らしい演奏に堪能しました。
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