2010年11月11日木曜日

東京藝術大学モーニングコンサート観覧

平成22年11月11日(木)
東京藝術大学
奏楽堂
指揮:ドミトリー・シトコヴェツキー(旧ソ連出身のヴァイオリニスト・指揮者)
演奏:藝大フィルハーモニア
11:00~12:0
 
前半
◆田中裕香(4年) Hiroka Tanaka
 E.ライヒェ:トロンボーン協奏曲 第2番(演奏時間約15分)

田中裕香さんは、兵庫県立西宮広告音楽科卒業
現在、東京藝術大学4年在学中
第16回日本クラシック音楽コンクール 金管部門第2位(1位なし)
安宅賞を受賞
 
田中さんの解説によると
「オイゲン・ライヒェ(1878~1946)は1890年末にドイツからロシアへ渡り、サンクト・ペテルブルクにあるマリンスキー劇場のトロンボーン奏者となる。1933年よりサンクト・ペテルブルグ音楽院においてトロンボーンの教授を務め、1946年に当地で没する。
 ライヒェにはトロンボーン協奏曲が2つある。第2番は、1902年にベルリンのプロイセン宮廷楽団のソロ・トロンボーン奏者であったパウル・シュリュケの為に作曲された。
 彼が書いた2つのトロンボーン協奏曲は、いずれもロシアにおけるトロンボーン奏者のレパートリーの一画を占める重要な作品であるが、特に第2番は、ドイツ・ロマン派の最も美しいトロンボーン協奏曲の一つとして、ゆるぎない地位を占めている。
 今回演奏するトロンボーン協奏曲第2番は
   1.Allegro Maestoso
   2.Adagio
   3.Rondo
から構成されている。この協奏曲は、素朴ながら美しい旋律を奏でる音楽的な部分と、音の跳躍の技術・音域の広さを試される技術的な部分の両方を兼ねそなえている作品である。
 また1楽章と3楽章は、トロンボーン独奏曲ではめずらしいイ長調で書かれている。
 1.Allegro Maestoroは壮大な交響曲を思わせるオーケストラの前奏で始まる。トロンボーンの音域が最大限に使われており、堂々とした部分と軽快な部分のバランスが絶妙である。悲壮感が漂うカデンツの後、そのまま2楽章のAdagioへ入る。
 2.Adagioでは、弦楽器の柔らかい伴奏の上にトロンボーンの甘美な旋律が加わり、とても安らかでゆったりとした音楽が進んでいく。旋律の所々に強い主張が込められており、温かみの中にも静かな情熱を感じさせる。
 3.Rondoは、再び明るいイ長調へと戻り、村のダンスを思わせる軽快で活発なリズムで始まる。この楽章では、低音からの跳躍がまるで音遊びのように多用されているが、曲の雰囲気を壊さず、とても躍動的である。
 そして最後は1楽章の冒頭を率いたコーダとなっており、エネルギーに満ちた、うねる旋律を経てオーケストラと共に華やかに終結する。」
 しっかりした演奏だった。男に向いた楽器のように思えるが女性とは思えないような演奏。素晴らしい。
 
後半
◆山田麻美(4年) Asami Yamada
 J.ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77(演奏時間約38分)
 
1988年生まれ
2007年 第76回日本音楽コンクール第3位
 
山田さんによれば
「オーストリア南部ペルチャッハ、静かで清々しいヴェルター湖畔の村。ベートーベン、メンデルスゾーンと並んで3大ヴァイオリン協奏曲とし称されるこの名曲はここで生まれた。
 「ここでは、散歩をしている時でも、踏みつぶそうになるくらいたくさんの旋律が生まれてきます。」ブラームス本人がこう語ったように、この時期に書かれた作品の多くは、明るく牧歌的で、美しい旋律に溢れている。たとえば、前年に作曲された交響曲第2番、ヴァイオリン・ソナタ1番、それから同時期に書き始められたピアノ協奏曲第2番などがそうである。このヴァイオリン協奏曲もそうした特色を持つ典型的な作品と言えるだろう。
 この協奏曲の完成には、彼の友人で名ヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムの存在が欠かせない。前々から、公私共にお世話になっていたヨアヒムの為に協奏曲を…と考えていたその矢先、サラサーテの弾くブルッフのヴァイオリン協奏曲を聴いて火がついたようだ。ヨアヒムは惜しみなく専門的な助言をした。厚い友情があったからこそ生まれた傑作だ。ということで、今回のカデンツァは盟友ヨアヒムのものを演奏したいと思う。
 
第1楽章(Alleguro non troppo)
 ソナタ形式。交響曲第2番を思わせる穏やかなオケ主題で開始される。内面的な陰りとしなやかな抒情、そうかと思えば壮大で力強くたくましい。コントラストが実に鮮やかである。演奏時間の半分以上を占める長大な楽章。(カデンツァ:ヨアヒム)
 
第2楽章(Adagio)
 三部形式。ブラームスいわく「弱々しいアダージョ」らしい。牧歌的なオーボエの独唱、哀愁漂う中間部、ペルチャッハの美しい自然とそこでの快適な生活が反映されている。
 
第3楽章(Allegro grocoso,ma non troppo vivace)
 不規則なロンド形式。ジプシーふうの旋律はハンガリー生まれのヨアヒムへの敬慕の表れだろうか。
終結部にはトルコふうのリズムを使っており、生気に満ち溢れている。
 
 心の底までしみいるようなこの作品を、強く、優しく、美しく、演奏できたらと思います。」
 
素晴らしい出来だった。オケも指揮も独唱もすべて相まって名演奏だったと思う。本当に満足。
(席の近くで、ジャンパーにマスクの老男性、気持ち良く眠るのは良いのですが、鼾はやめてほしい。せっかくの素晴らしい演奏に集中できない。残念)
 
 約1,000席の奏楽堂が満席。無料でこの演奏が楽しめたら何も言うことはない。東京藝術大学と関係者に感謝。

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