2012年3月18日日曜日

新国立劇場 マンスリー・プロジェクト3月 スペシャルトーク「鄭義信 三作品をふりかえる」

平成24年3月17日(土)
新国立劇場 小劇場にて
マンスリー・プロジェクト3月
スペシャルトーク「鄭義信 三作品をふりかえる」を聴く
17:30~18:30


小劇場入り口の壁に飾られているボタ山の絵

通路から覗いた舞台
井戸が象徴的


マッコリが売られている
(マンスリー・プロジェクトでは売られていない)


マンスリ・プロジェクト 3月
2012年3月17日(土) 5:30pm 小劇場

スペシャルトーク「鄭義信 三作品をふりかえる」
ー『たとえば野に咲く花のように』『焼肉ドラゴン』『パーマ屋スミレ』をめぐってー

出席者:鄭義信(劇作家・演出家)
聴き手:内田洋一(日本経済新聞文化部編集委員)

1950年から70年へ、戦後復興から高度経済成長を遂げた日本の光と影。
底辺からの目線で、悲喜劇として在日コリアンを描いた三作品をふまえ、
過去の作品も交えながら鄭義信の世界を語る。

<登壇者プロフィール>
鄭義信(チョン・ウィシン)
1993年に『ザ・寺山』で第38回岸田國士戯曲賞を受賞。その一方、映画に進出して、同年、『月はどっちに出ている』の脚本で、毎日映画コンクール脚本賞、キネマ旬報脚色賞などを受賞。98年には、『愛を乞うひと』でキネマ旬報脚本賞、日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第一回菊島隆三賞、アジア太平洋映画祭最優秀脚本賞など数々の賞を受賞した。さらに平成13年度芸術祭大賞を受賞した『僕はあした十八になる』(2001年NHK)などテレビ・ラジオのシナリオでも活躍する一方、エッセイ集『アンドレスの帽子』なども出版。
現在も、文学座、こんにゃく座ほかに戯曲を提供する傍ら、自身も作・演出を務めるユニット<海のサーカス>に参加している。07年10月には新国立劇場『たとえば野に咲く花のようにーアンドロマケ』の脚本を手がけた。そして08年の新国立劇場『焼肉ドラゴン』では、第16回読売演劇大賞優秀演出家賞、第12回鶴屋南北戯曲賞、第43回紀伊國屋演劇賞個人賞、第59回芸術選奨文部科学大臣賞をそれぞれ受賞している。現在上演中の『パーマ屋スミレ』の作・演出のほか、13年5月に描き下ろし『アジア温泉』(仮題)の上演を予定している。

内田洋一(うちだ よういち)
1960年、東京生まれ。83年、早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。社会部をへて84年から文化部で舞台芸術、美術、文化政策などを担当する。94年から3年間、大阪本社文化部で取材した。文化部次長をへて2004年から編集委員。現在、日本経済新聞、同電子版で劇評を執筆、日曜版「美の美」でレオナルド・ダヴィンチ、ギリシャ美術、世阿弥、千利休、松尾芭蕉、浮世絵など幅広い題材で記事を書いてきた。
著書に「阪神大震災は演劇を変えるか」(共著、晩成書房、95年)、「あの日、突然遺族になった阪神大震災の十年」(白水社、04年)、「風の天主堂」(日本経済新聞出版社、08年)、日本の演劇人「野田秀樹」(編著、白水社、09年、AICT演劇評論賞)、「現代演劇の地図」(晩成書房、2010年)がある。現代俳句協会会員。

<鄭義信 三作品概要>
たとえば野に咲く花のように -アンドロマケー
(2007.10.17~11.4 中劇場)
会場10周年フェスティバル公演として上演された『三つの悲劇 ギリシャから』三部作の第二作目。義理Hさ三大悲劇詩人エウリピデスと、フランス古典主義を代表するラシーヌが描いた“アンドロマケ”を、1951年、朝鮮戦争中の日本に部隊を移して描き出した“大爆笑の大悲劇”
【ものがたり】
1951年夏、九州F県の、とある港町の寂れた「エンパイアダンスホール」。戦争で失った婚約者を想いながら働く安田満喜。そこへ、先ごろオープンしたライバル店「白い花」を経営する安倍康雄と、その弟分の竹内直也が訪れる。戦地から還った経験から「生きる」ことへのわだかまりを抱いていた康雄は、「同じ目」をした満喜に夢中になり店に通い詰めるが、満喜は頑として受け付けない。一方、康雄の婚約者・四宮あかねは、心変わりした康雄を憎悪しながらも、恋心を断ち切れずにいる。そんなあかねをひたすら愛し続ける直也。一方通行の四角関係は出口を見つけられないままにもつれていく。
彼らを取り巻く、満喜の弟・淳雨と女給のひとり・鈴子、同じ女給の珠代とそのなじみ客・菅原太一、ダンスホールの支配人・伊東諭吉、淳雨の仲間・李英鉄らもそれぞれ戦争の傷や、思うままにならない恋にもがきながら生きているのだった。

焼肉ドラゴン
(初演 2008.4.17~4.27 小劇場、5.20~5.25 ソウル・芸術の殿堂
再演 2011.2.7~2.20 小劇場、3.9~3.20 ソウル・芸術の殿堂)
ソウル・芸術の殿堂との合同公演。ある在日コリアンの家族を通して、日韓の過去、現在、未来を音楽入り芝居でおかしく、そして切なく描いた話題作。2008年に東京都ソウルで上演し、両国で毎回スタンディング・オベーションとなる熱狂的な支持を受け、その年の演劇賞を多数受賞した。
【ものがたり】
万国博覧会が催された1970(昭和45)年、関西地方都市。高度成長に浮かれる時代の片隅で、焼肉屋「焼肉ドラゴン」の赤提灯が今夜も灯る。店主・金龍吉は太平洋戦争で左腕を失ったが、それを苦にすることもなく淡々と生きている。家族は、先妻との間にもうけた2人の娘、後妻・英順とその連れ子、そして英順との間に授かった一人息子・・・・・・ちょっとちぐはぐな家族と、滑稽な客たちで、今夜も「焼肉ドラゴン」は賑々しい。ささいなことで泣いたり、いがみあったり、笑ったり・・・・・・。
そんななか、「焼肉ドラゴン」にも、しだいに時代の波が押し寄せる・・・・・・。

パーマ屋スミレ (2012.3.5~3.25 小劇場)
前二作のちょうど真ん中、1965年、オリンピックの翌年から始まる物語。九州のとある炭坑町で、炭坑の事故に巻き込まれた在日コリアンの家族たちが必死で生きる姿を、時に切なく、時におかしく描いた、鄭義信の最新作。
【ものがたり】
1965年、九州。「アリアン峠」と呼ばれた小さな町があった。そこからは有明海を一望することができた。アリラン峠のはずれにある「高山厚生理容所」には、元美容師の須美とその家族たちが住んでいる。須美の夫の成勲は炭鉱での爆発事故に巻き込まれ、CO患者(一酸化炭素中毒患者)となってしまう。須美の妹・春美の夫もまたCO患者となり、須美たちは自分の生活を守るために、生きるために必死の闘いを始めた。しかし、石炭産業は衰退の一途をたどり・・・・・・。




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