平成24年5月12日(土)
18:00~19:30
新国立劇場 2011/2012/シーズン演劇
マンスリー・プロジェクト
リーディング公演
エリ・プレスマン作『ドン!』
新国立劇場小劇場
(無料)
出演:中嶋しゅう/粟野史浩/熊坂理恵子
翻訳:佐藤康
演出:宮田慶子
ユダヤの老人とイスラームの若者が「永遠行き」のバスが来るはずのバス停(砂漠の中の石碑)で邂逅し、老人が未来を若者に託して殺されていく短編。コミカルな要素の中に歴史への眼差しが垣間見える秀作がリーディングで上演された。
語りの熊坂理恵子さんは、最初に語りで話を始めた後は殆どきまじめに座っていたが、途中で女優らしさを仕草で示すという芸達者ぶりを見せた。
老人役の中嶋しゅうさんは、長台詞が続き、表現力も要求される難しい役を見事にやり遂げた。非常に体力もいる難役だった。
若者役の粟野史浩さんは、中嶋しゅうさんとのやり取りが間が良く好演だった。
3人(特に男性2人)ともに素晴らしい演技で大満足。
プリフィール
作:エリ・プレスマン
1933年生まれ。ジャン・ヴィラールの国立民衆劇場(TNP)に参加。俳優として、またヴィラールの演出助手として活躍した後、劇作や作詞にたずさわる。本格的な劇作家としてのキャリアを歩みだしたのは国際裁判所の職員を引退した90年代に入ってから。以来、年齢を全く感じさせない斬新な設定とみずみずしい文体で次々と作品を世に送り、2000年代になってからはそれまでの劇作を収録した全4巻の戯曲集も刊行されている。作品には出自のユダヤ問題を正面から取り上げた作品が多いが、過去の悲劇に対する赦しを模索する優しさに満ちた作風に特徴がある。そのほかの作品にユダヤ人収容所の記憶をめぐる『聞かせてよ愛の言葉を』、フロイトとマルクスが架空の対話をする『思念への逃走』などがある。
翻訳:佐藤康
現代フランス演劇研究。学習院大学ほか講師。多くの舞台翻訳にたずさわるとともに、演劇批評、リーディング公演の演出にも取り組んでいる。新国立劇場現代戯曲研究会メンバー、黒テント同時代リーディングシアター・ディレクター。また日仏演劇協会編「現代フランス語圏演劇」(れんが書房新社)の編集委員もつとめている。代表的な舞台翻訳にイヨネスコ作『瀕死の王』(小田島雄志翻訳戯曲賞受賞)、タワ作『罠』、アザマ作『十字軍』、ヴィナヴェール作『いつもの食事』などがある。またフランス語教育関係の著述も多く、NHK「テレビでフランス語」の講師もつとめた。
演出:宮田慶子
1980年、劇団青年座(文芸部)に入団。翻訳劇、近代古典、ストレートプレイ、ミュージカル、商業演劇、小劇場と多方面にわたる作品を手がける一方、演劇教育や日本各地での演劇振興・交流に積極的に取り組んでいる。94年第29回紀伊國屋演劇賞個人賞(『MOTHER』)、97年第5回読売演劇大賞優秀演出家賞(『フユヒコ』)、98年芸術選奨文部大臣新人賞(『ディア・ライアー』)、2001年第43回毎日芸術賞千田是也賞、第9回読売演劇大賞最優秀演出家賞(『赤シャツ』『悔しい女』『サラ』)など受賞。新国立劇場では、『ディア・ライアー』『かくて新年は』『美女で野獣』『屋上庭園』『ヘッダ・ガープレル』『わが町』『おどくみ』『朱雀家の滅亡』、オペラ『沈黙』を演出。10年9月より新国立劇場演劇芸術監督に就任。
◆出演◆
老人
中嶋しゅう <なかじま・しゅう>
劇団NLT出身。主な舞台に、『ニュルンベルク裁判』『かもめ』『キーン』『炎の人』、新国立劇場『欲望という名の電車』『母・肝っ玉とその子供たち』『氷屋来たる』『ヘンリー六世』など。『BLUE/ORANGE』、『今は亡きヘンリー・モス』において2010年紀伊國屋演劇賞個人賞受賞。映画ではハリウッド作品である『ラーメンガール』、『4 7RONIN』(2012年12月公開予定)に出演。また演出も手がけ『ラスコリニコフとスヴィドリガイロフ』、『天切り松 闇がたり』などの作品がある。
若者
粟野史浩 <あわの・ふみひろ>
西武鉄道アイスホッケー部、西武園遊園地勤務を経て、文学座附属演劇研究所に入所。2002年、座員となる。
『跳べない金糸雀の唄』で初舞台。以降、劇団公演のほか、外部出演も多数。主な舞台に、『アラビアンナイト』『人が恋しい西の窓』『リチャード三世』『中二階な人々』『女の一生』『悪女について』『ガラスの動物園』『第17捕虜収容所』『黒革の手帳』『音楽劇 わが町』『ロマンサー~夜明け峠編~』、新国立劇場『母・肝っ玉とその子供たち』『やわらかい服を着て』『氷屋来たる』『負傷者16人』など。
語り
熊坂理恵子 <くまさか・りえこ>
新国立劇場演劇研修所第3期修了。
主な舞台に、『ロックンロール』『水の手紙』、ミュージカル『誓いのコイン』、新国立劇場演劇研修公演『美しきものの伝説』『るつぼ』『少年口伝隊一九四五』『友達』、新国立劇場『負傷者16人』など。
協力:俳優座劇場舞台美術部。
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