2011年9月21日水曜日

「だしの取り方を教えて。」毎日新聞9月20日朝刊より

「◆だしの取り方を教えて。


 ◇ボウルにお湯、1分で
 ◇沸騰させると臭み、雑味/昆布・カツオ節、厳選を


 おわんのふたを開けると、湯気と一緒におすましから、だしの上品な香りが漂う。日本人でよかったと思う瞬間。昆布とカツオ節で丁寧にひいた「だし」は、和食の基本だ。
 ただ、手間がかかると敬遠され、市販の粉末などで間に合わせる人も多くなっている。そこで本格的な「だし」の取り方を、日本料理の重鎮、「分とく山」総料理長、野崎洋光さんに聞いた。

 「多くの人は、だしのことを知っているようで知らない」と野崎さん。だしというと、昆布とカツオ節を思いがちだが、肉、魚介類、野菜などからも取れるという。「野菜をゆっくり煮ると、うまみが出てくるでしょう、それもだし」。素材が本来持つ味をだしが補い、料理になった時、100%のうまみになる。
 だしと素材の組み合わせも大切だ。野崎さんは筑前煮をだしで煮るのはおかしいと疑問を投げかける。
 「鶏肉を昆布とカツオ節で煮るのは矛盾している。肉と魚のうまみはお互いを補わないし、だしは煮詰めてしまうと完成された味を壊すことになる」
 たとえば「大根のみそ汁」。料理店では昆布とカツオ節でだしを取り、みそを加える。別鍋で湯がいた大根の千切り、ネギ、三つ葉をおわんに入れみそ汁を注ぐ。これに対し家庭では、鍋に大根の千切り、ワカメ、油揚げなどを入れ、みそで味付けする。どちらが本来の「大根のみそ汁」かといえば、家庭で作るものだという。料理店のものは「カツオ節と昆布のみそ汁」だと。
 みそ汁は野菜、豆腐、海藻類の具材からだしが出ておいしい。だしを取らず、みそのうまみだけでも十分だという。

80度の湯1リットル、昆布5グラム、カツオ節10グラムを用意
 野崎さんが薦めるだしの取り方は鍋を使わない。ボウルに80度の湯を入れ、昆布とカツオ節を加え1分置き、こすだけだ。料理店のように大量にだしを取る場合は鍋を使った方がいいが、家庭の場合はボウルで十分だという。お湯を沸騰させてしまうとカツオ節、昆布の臭み、えぐみ、雑味などが出る。「湯冷ましでじっくりいれる煎茶と同じです。乾物の基本的な扱い方です」

 二番だしは、一番だしを取った後の昆布とカツオ節を別のボウルに入れ、一番だしの半量の湯を注ぎ5分置いてこす。残った昆布とカツオ節は細かく刻んでポン酢に浸して保存しておく。このポン酢に浸したものにゆでた三つ葉、ホウレンソウをあえればおかずが一品できる。

 黄金色の一番だしは、昆布とカツオの香りがほのかにし、上品な味。しょうゆを垂らすと互いの香りがひきたち、うまみが凝縮される。のどごしがよくさっぱりした味わいで、おすまし、そば、うどん、だし巻き卵、茶わん蒸しなどに合う。

 ポットに80度のお湯があれば本格だしが数分で取れるが、昆布はうまみが出るだし昆布を、カツオ節もだし用の削り節を使う。自分がおいしいと思うものを見つけることが大切だ。

 「今まで料理の常識と思っていたことを疑ってほしい。だしをぐだぐだと煮立たせたら、香りもうまみも飛んでしまう。本当においしいだしを試してみることから始めてください」

湯を耐熱性のボウルに入れ、昆布とカツオ節を入れる。1分ほど置き、うまみを抽出する
 ★一番だしの取り方
 <1>80度の湯1リットル、昆布5グラム、カツオ節10グラムを用意
 <2>湯を耐熱性のボウルに入れ、昆布とカツオ節を入れる。1分ほど置き、うまみを抽出する
 <3>ペーパータオルを敷いたザルでこす。だしがらは雑味が出るので、絞らない

 ■一番だしを使って--
 ★そば
ペーパータオルを敷いたザルでこす。だしがらは雑味が出るので、絞らない
 つゆ(だし300CC、薄口しょうゆ20CC、みりん10CC)を合わせる。比率は、だし15:薄口しょうゆ1:みりん0.5。長ネギ、ワカメ、温泉卵などを。

 ★うどん

 つゆ(だし300CC、薄口しょうゆ、酒各15CC)を合わせる。比率は、だし20:薄口しょうゆ1:酒1。薄揚げ、ホウレンソウ、かまぼこなどを。
 ※うどんは麺に塩分が含まれているので、そばよりしょうゆは少なめでいい
 ■人物略歴
 ◇のざき・ひろみつ
 1953年、福島県生まれ。89年に「分とく山」を東京・南麻布に開店、現在5店舗の総料理長。本格的な和食の味を家庭でも作れる調理方法を紹介する。「野崎洋光のおいしい節電レシピ」(東洋経済新報社)など著書
毎日新聞 2011年9月20日 東京朝刊」

非常に参考になる記事だったので備忘録として保存。

0 件のコメント: