平成24年1月24日(火)
NHK横浜 新放送会館 1周年記念
第26回 NHK 能楽鑑賞会
横浜能楽堂
(横浜市西区紅葉ヶ丘27-2)
【一調一声(いっちょういっせい)】三井寺(みいでら)
小鼓 大倉源次郎
シテ 本田光洋
能の演奏方式として、全曲上演ではなく、一部分を抜き出して略式演奏するやり方があるが、そのうち、打楽器奏者一人と謡い手一人による演奏を「一調」と呼ぶ(「一調一声」はその変種)。謡い手は面装束をつけず、座ったままで所作は伴わない。演奏箇所は、各曲の謡の聞かせどころであり、打楽器は普通とは異なる特別の手組(てぐみ)を打つ。旋律・リズム・音色など、ひとつの楽器と謡とが織りなす音楽的魅力が味わえる。今回演奏するのは、小鼓の一調。母親物狂能(三井寺)の後シテ登場以降、三井寺に到着するまでの「道行き」である。
【狂言】文山立(ふみやまだち) -大蔵流
シテ 山本則俊
アド 山本則秀
もう少しというところで追い剥ぎに失敗した二人の山賊は、互いに相手への不満を言いつのり、とうとう果し合いにまでエスカレートする。とはいえ、見物人もなく死ぬのは残念。そこで、事の次第を妻子に書き置くことにした。ところが、声に出して遺書を読み進めるうちに、妻子の嘆きを思いやる箇所で二人とも泣き出してしまう。結局、死ぬのはとりやめにして、仲直りする相談がまとまり、二人は手を取り合って戻っていく。
猛々しい一般イメージとは裏腹に、二人の山賊は根っからの臆病で涙もろい。イメージと実態の落差や、意志のいい加減さを笑いのポイントに置き、全体としては「命が一番大切」という暖かいメッセージが伝わってくる。一度はじめたケンカは、やめたくてもなかなかやめられないものである。ここには、建前に翻弄される人間への風刺も込められているだろう。弓矢と槍を携えた山賊同士の、ボケとツッコミにも似た言葉のやり取りが愉快。
【能】船弁慶(ふなべんけい) -観世流
重キ前後之替
名所教
船唄
シテ 静御前
平知盛の怨霊 梅若 玄祥
子方 源義経 梅若 秀成(最初はセリフを忘れたり困っていたが、
1時間半頑張りとおした)
ワキ 弁慶 殿田 謙吉
ワキツレ 従者 大目方 寛
則久 英志
アイ 船頭 山本 東次郎
笛 一噌 隆之
小鼓 観世 新九郎
大鼓 柿原 弘和
太鼓 助川 治
後見 梅若 長左衛門
梅若 紀彰
小田切 康陽
地謡 観世 喜正
山崎 正道
梅若 猶義
松山 隆之
角当 直隆
坂 真太郎
土田 英貴
内藤 幸雄
兄頼朝との不仲により、摂津の国(兵庫県)大物の浦まで落ちてきた義経(子方)は、弁慶(ワキ)の進言に従って、静(前シテ)を都へ帰すこととした。静は義経の前途を祝して舞い、泣く泣く去っていく(中入)。義経一行は西国へ出航するが、途中でにわかに風が出て、激しく波が寄せてくる。船頭(アイ)は懸命に船を漕ぐが、不吉な予感は的中し、海上に平家一門の亡霊たちが雲霞の如く浮かび出でる。なかにも平知盛(後シテ)は、義経を海中に沈めんと、長刀を振り回し、波を蹴立てて襲い掛かる。弁慶は数珠を揉んで不動明王に祈り、義経は太刀で防戦し、船頭も力を合わせて船を漕ぐ。やがて怨霊は折からの引き潮に揺られ流れて行き、跡は白波があるだけとなった。
室町後期を代表する能作者、観世信光の代表作。
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